更新情報
2024年10月 茶況_No.407
産地情報
令和6年10月31日
茶 況
秋冬番茶の摘採を終えた茶園では秋整枝などの茶園管理を進めています。また、茶草場農法を実践している生産者は茶園に敷く草を山の斜面で刈り取り茶園に敷く準備をします。茶草場は山の斜面が多く大変な作業となりますが美味しいお茶づくりには欠かせない作業です。10月初旬から始まった秋冬番茶は前年比15%前後の減産でしたが価格が15%前後高かったので前年の売上は確保できました。ドリンク関連の需要が高く相場は終盤まで堅調に推移しました。各問屋は生産前に予約本数を各工場に連絡して数量の確保に動きましたが、生産量が少なくて発注分が全量入らなかった問屋もあります。最近はティーバッグ原料として使いやすい「ブロークン」タイプの秋冬番茶が増えてきました。農林水産省は2024年の全国茶園面積を3万5100ha(2.5%減)と発表しました。静岡県1万2800ha(3.7%減)鹿児島8150ha(増減なし)三重2590ha(増減なし)京都1500ha(2%減)となっています。静岡県は山間地を中心に高齢化した生産者の離農が進んだことが一因ではありますが、昨今の深刻な茶価低迷から廃業を選択する生産者も多く耕作放棄地の増加も一因となっています。そんな中、県内の若手茶商らでつくる茶業青年団は「このままでは茶業界に先はない」との強い危機感から、県内の若手生産者に呼び掛けて意見交換の会を持ちました。将来を担う世代が立場を超えて打開策を探る会合となりました。双方の意見を傾聴する真剣な眼差しであふれ、一向に上がらない茶価に苦しむ生産者側の悲鳴と欲しい茶が届かない茶商側のもどかしさなど、互いに抱えていた不満を打ち明け、前向きな議論が熱をおび閉会しました。「静岡茶業界の未来を当事者が真剣に考える第一歩になれば嬉しい」、「生産者あっての茶商という意識を持ち共栄できる関係を築いていきたい」との声も聞かれました。静岡県で取引の中心を担う静岡茶市場が電子入札システムの導入を検討しています。デジタル化により取引を効率化して現行の相対取引で低調な価格設定機能の立て直しを図るのが狙いです。全国の茶取引をリードしてきた静岡茶市場ですが、近年はリーフ茶の消費低迷による茶価下落を受けて厳しい経営が続いています。昨年度の取引金額はピーク時の8割減に落ち込み12期連続の赤字となりました。静岡県の茶取引は昔から「そろばん」での相対取引が基本で取引が成立すると「シャン・シャン・シャン」の手合わせを行うのが慣例となっていて「そろばん・手合せ」が静岡の文化だとおっしゃる方もいるくらいです。需要のニーズをとらえた根本的な解決策をしなければ、そろばんがデジタルに変わっても生産者の所得向上には繋がらないのではとの声も聞かれます。
産地問屋は仕上・袋詰・発送作業を進めながら年末商戦を視野に販売戦略を練っています。先日、静岡茶市場で「鶴亀品評会」の入札会が開催されました。鶴印(4000円)の落札率45%、亀印(2000円)の落札率48%と慎重な仕入姿勢が目立ち厳しい状況が反映された結果に先行きを懸念する声も聞かれました。静岡県は静岡茶の輸出拡大に向け「静岡茶海外販路拡大コンソーシアム」を立上げ、県内の生産者や茶商が10社以上で海外の展示会に出展する場合には費用を助成する方針を示しました。世界的な日本食人気や健康志向の高まりから緑茶の需要が海外で急拡大する中、海外での販路開拓を後押ししていく方針です。
消費地では「秋の売り出し」を実施しながら「歳暮商戦」の準備をしています。物価高により財布の紐は締まり苦戦が予想されますが「あのお店の、あの商品を、あの人から買いたい」と言われるように日々努力を続けます。今回の選挙も「あなたに一票入れたい」と思わせる魅力ある候補者が当選を果たしたような気がします。
日本で論理的に正しくても、世界でも正しいとは限らない
先日の衆院選では自公で過半数を割り込むという極めて厳しい国民の審判が出ました。派閥裏金事件に正党交付金2千万円問題が発覚。国民は物価高に賃金上昇が追いつかず苦しい生活を強いられているのに「何をやっているんだ」との怒りが爆発した形です。自民党には改革が必要という今回の選挙結果が国民の総意ではないでしょうか。石破内閣支持は32%と急落し、自公政権を望まないは53%でしたが、石破首相の辞任は不要が66%に上り政権の安定化を望む意向もにじみます。世界には独裁国家・専制政治の国が数多く存在し25年以上も強権政治を続けている国もありますので、選挙で民意を示すことのできる日本は善しだとの意見も聞かれます。自公の連立政権は維持しますが、今後の政権運営は極めて不安定になります。いつでも内閣不信任案が可決できる状況ですから、緊張感のある国会、熟議の必要な政治に入りますので、日本にとっては良いことかもしれません。日本創世、成長型経済、地方振興、少子高齢化対策、日本を守る、など世界と戦える「成長戦略」に期待します。
「日本で論理的に正しくても、世界で正しいとは限らない」ある政治家の言葉ですが、論理的に詰めることを目的化するのではなく、それによって何を実現するかを徹底的に考え抜くことが大切だと説きます。その意味で日本の各党首は論客揃いですので語ったことの実現が楽しみです。理解が得られないと思って自分の正論にしがみつく政治家もいます。人間は誰でも野心と虚栄心の二つを持っています。野心は何かを為したいという強い思いですが、虚栄心は他人にどう思われるかを重要視する気持ちです。何かを為したいひとは必ず虚栄心より野心の方が大きいはずですので、確固たる自信は日本のトップ首相には不可欠な資質となります。国は経済の興隆・安定・継続が求められますが放っておくと社会に格差が生じて社会不安や不満につながってしまいますので、これを是正するのが政治の役割です。政治は経済の繁栄による高度成長を安定成長に移行させるための任務を受け持っています。安定成長期を長期に続けていくことができればいいのですが、すぐに衰退期に入ってしまうケースもあります。歴史上では、この短命に終るケースが多く見受けられます。今の日本が望んでいるのは、かつての高度成長時代にもどるV字回復ではありません。堅実で長続きする安定成長期を作り上げるための政治です。それにはトップに立つ政治家の視点と手腕に注目です。30年続いたデフレがインフレに転じようとしつつあり、デフレ脱却を機に利上げ➝生産性向上➝賃金上昇の好循環へ繋げられるかに注目が集まっています。
日本は少子高齢化の時代に入り人口がどんどん減っていきますのでGDP(国内総生産)を維持していくためには生産性を高めるしか方法はありません。これまで低い金利水準の下で生産性の低い企業も温存されてきましたが、これからは痛みは伴いますが生産性が高く、稼ぐ力がある企業、賃金アップのできる企業が残っていけるように変わる必要があります。そして超円安の是正も最重要課題です。円安により輸入価格が上がり物価高になって国民生活を圧迫しているからです。オールジャッパンの体制を作って落ちる一方の日本を支え、その後に安定成長に持っていくという重責を果たさなければいけません。世界から「衰退国家日本」と揶揄されないためにも世界に誇れる日本をもう一度立て直す必要があります。
「魚は頭から腐る」のことわざもありますが、国も企業もトップ次第で将来が決まります。
トップには今までの経験と縦軸・横軸の情報に基づいて決断する知力と胆力は必須になります。世界に対抗できる競争力をつけて実行に持っていく能力の向上と、この国を再生するための施策に国民は期待しています。
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