更新情報
2022年10月 茶況_No.386
産地情報
令和4年10月20日
茶 況
茶園では今年最後となる秋冬番茶の摘採が終わり、来年の一番茶に向けて摘採面を揃える整枝作業や防除作業などが行われています。これからは茶園の畝間に敷く山草を刈る作業や越冬準備のための管理作業が主となります。秋冬番茶はドリンクメーカーとスーパーに販売先を持つ問屋に買い手が限られるために終盤には満腹感が広がり360円~320円と昨年並みの価格で終了を迎えました。生産者は肥料、重油、電気代などの製造経費の高騰で厳しい経営環境が続きます。採算割の工場は製造しないで刈り落とす茶畑もありましたので減産が予想されます。急須で入れるリーフ茶需要が低迷する一方でペットボトル茶飲料の消費は増加傾向にあるため茶業研究センターは飲料用原料向けに大量生産型の新品種「95・7・35」と「95・2・213」の2品種を発表しました。収穫量は、やぶきたの約2倍を見込めるそうです。
産地問屋は仕上と発送作業を進めながら年末商戦を視野に販売戦略を練っています。販路開拓に向けた新しい提案や企画は欠かせませんが、リーフ茶需要の低迷が続き打開策に苦慮しています。そんな中、全茶連の月刊情報誌「全茶連情報」が50年余りの歴史に幕を下ろし7月号で廃刊となりました。通算529号が最後となったことに県内茶問屋からは「業界の力が弱まっているから、ショックだ」と廃刊を残念がる声が多く聞かれます。新型コロナ対策として政府が始めた実質無利子、無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が来春から本格化します。ゼロゼロ融資は担保無しで234万件、42兆円を貸し出し巨額の公費を投じて企業の資金繰りを支えましたので貸出中は倒産件数は過去最少の低水準に抑えられてきましたが、来春からは過剰債務に陥った企業の倒産への懸念が強まっています。損失は公費で穴埋めされ国民負担になると懸念する声も出始めています。
消費地では秋需に向けて、「秋の蔵出しセール」や「秋のお茶まつり」などの店頭販売に努めています。今年は3年振りに各地で秋祭りも再開され以前の賑わいが戻りつつあり今後の店頭の活気に期待します。商店街はおかみさんの愛想が良いと行きたくなることから「おかみさん会」を立ち上げて頑張っている商店街もあります。コミュニティーの担い手、憩いの場、防災の拠点等の役割を担って儲け至上主義とは真逆の方向ですが、地域密着の商店街そのものの価値を押し上げて毎月16日の「定期市」は地域住民で繁盛している商店街もあります。政府は金融政策、物価高騰対策、賃上対策などの緊急対策を急いでいますがハッキリとした効果は感じられません。世界デジタル競争力ランキングで日本は29位と調査開始以降最低となりました。1位デンマーク、2位米国 3位スウエーデン 、4位シンガポール、8位韓国、11位台湾、18位中国と日本29位の低迷ぶりが際立ちます。女性の働きやすさランキングでも日本はワースト2位です。1位スウェーデン、上位4カ国を北欧諸国が占め、27位トルコ、29位韓国、日本は下から2番目の28位と世界水準から大きく水をあけられています。給与水準の男女格差など日韓両国で6年連続で最下位の不名誉です。種々の対策は急務ですが、将来を見据えた世界水準の早目早目の対策が政府に求められています。
稲盛和夫の遺言
稲盛和夫氏が経営にもがく中でつくりあげた「アメーバ経営」と「フィロソフィ経営」、「経営12カ条」と「六つの精神」などの経営哲学は、単なる経営技法の領域を超えて若い経営者の心の拠りどころとなっています。
稲盛経営はアメーバ経営とフィロソフィ(哲学)経営が2本柱ですが、アメーバ経営は利益の最大化を目指し、フィロソフィ経営は利他(他を利する)的精神を徹底するもので経済性と道徳性の両立という大きな矛盾を抱えています。その2つの両立は、なかなかの難問であり、見る人によっては稲盛氏が偽善者と映ることもあります。経済性と道徳性の両立という命題は昔から難問でした。渋沢栄一は「論語と算盤」を説き、二宮尊徳は「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」と喝破しました。稲盛氏は毎日すべての部門の利益が伸びているかを細かく確認する一方で、自分に向かって間違った行動をしていないかを厳しく問います。稲盛氏の説く「自利」でなく「利他」は、豊富な経営体験を昇華させて成立したという点で独自であり企業経営に適応する経営哲学になりました。世界の著名な経営者は、ここまでが「自利(自分の利益を得ること)」、ここから先は「利他(人々の利益を図ること)」と明確に区分していますが、稲盛氏は「自利」でも「利他」でもないという両立した境地に達していたのではないでしょうか。
稲盛氏が自らの後半生をかけて取り組んでいたのが、中小企業経営者を育てる「盛和塾」です。盛和塾は稲盛氏が京都の若い経営者たちに求められたのをきっかけに始まった稲盛氏の経営哲学を学ぶ会です。国内56塾、海外48塾「中国盛和塾」の塾生数は1万4千人以上に上ります。四川省の成都市で開かれた盛和塾大会では「中国の唐の時代には鑑真が東に渡り日本に漢文を伝えた。今日は稲盛が西に飛び中国に哲学を授ける」との文字が壇上の垂れ幕に書かれ、その教えをこう人達の目は輝いていました。
「経営12ヶ条」1,事業の目的・意義を明確にする 2,具体的な目標を立てる 3,強烈な願望を心に抱く 5,売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える 10,常に創造的な仕事をする 11,思いやりの心で誠実に 12,常に明るく前向きに夢と希望を抱いて素直な心で
「六つの精神」1,誰にも負けない努力をする 2,謙虚に驕らず 3,反省のある毎日を送る4,生きていることに感謝する 5,善行、利他行を積む 6,感性的な悩みをしない
社長の器以上に会社が大きくならないのなら社長が勉強して立派になることしかないと説きます。そして従業員に惚れられる経営者になるために自分を磨きなさいと言います。愚痴を言う前に、愚直にやっているのか、工夫をしているのか、そこを考える努力が足らんとエールを送ります。そして「人間として何が正しいか」を基本軸に捉えた経営哲学は多くの経営者に影響を与えました。
東京五輪を巡る受託収賄のニュースが大きく取り上げられていますが、稲盛氏の説く「やっていいこと悪いこと」という基本的な論理観を持っていたらこんな結果にはならなかったでしょう。「自利利他」の自利のみを優先し「俺が俺が」の我が某元首相、元理事の晩節を汚す結果になりました。
京セラ本社の執務室の壁面には、同じ鹿児島出身の西郷隆盛の言葉であり社是である「敬天愛人」の書が掛けられています。常に公明正大、謙虚な心で仕事にあたり、天を敬い人を愛し、仕事を愛し、会社を愛し、国を愛する心を自分の生き方としました。その剛毅木訥な人柄は多くの人に愛され慕われ、その遺言はこれからも後世に語り継がれていくことでしょう。
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