更新情報
2022年11月 茶況_No.387
産地情報
令和4年11月21日
茶 況
茶園では冷え込みが強まる冬期向けて敷草などの越冬に向けた準備を進めています。ススキやササなどの山草を10㎝ほどに裁断して茶の木の間に敷く作業です。敷かれた山草は雑草が伸びるのを抑え、土の乾燥や凍結を防ぎます。肥料・重油・電気料が値上がりしても販売価格は変わらない現状は、茶農家に暗い影を落としています。残るものはほとんどない、あるいは赤字になるといった声も聞かれ、廃業する農家や他の農作物との複合経営を検討する茶農家もあります。茶農家の負担を軽減するために「自民党茶業振興議員連盟」は対策などを求めて農林水産大臣に要望書を届けました。10月に開催された「世界お茶まつり」の来場者数は12万人と前回を上回り、煎茶道の茶席は満席の盛況ぶりでした。消費者のお茶への関心の高さが分かり不安解消の妙薬になりました。近年お茶人気が高いことからスターバックスはお茶に特化した店舗を開店しています。
産地問屋は歳末商戦の仕上・袋詰・出荷作業を精力的に進めています。個人消費が低迷し「次の一手」によって企業間格差も一段と広がる可能性があります。体力のあるうちに廃業を選択する問屋も出始めました。静岡茶品評会が3年ぶりに開催されました。入札参加商社は前回より6社少ない80社、落札総額は767万円少ない1297万円と現在の茶況を反映する結果でした。第56回静岡県茶品評会入札結果
第56回静岡県茶品評会入札結果
消費地では歳暮商戦の本番を前に忙しく準備対応をしています。送料に特典を持たせ「あのお店のあの商品」と言われるように地元に愛されるお店を目指します。地元に選ばれ続けるために、どんな対応ができるのかを考え取り組みますが、物価高騰による節約志向が強く、買い控えから苦しい年末商戦が続きます。
英国のトラス首相が英国史上最も短い就任後44日で辞任しました。富裕層や大企業が豊かになれば富が国民全体に行きわたり一般国民も豊かになるとの持論から、財源の裏付けのない大規模減税を発表しました。市場は、これに即座に反応して英通貨のポンドが急落したのが辞任の発端です。日本ではバラまきの経済政策と金利政策により31年振りの円安と物価高を経験しています。コロナ禍で売上減の中小企業を助けるために実施した「ゼロゼロ融資」と、給料が減収となり困窮した個人に無利子で生活資金を貸出す「緊急小口資金」。中小企業と個人に支援を実施して、一時的には助かり延命策となりましたが、中小企業と個人の借金が膨らみ、これから会社の債務整理や個人の自己破産が増えてくると予想されます。来年から融資・貸出の返済が本格化しますが、貸し倒れが増えますと政府の大きな負担となり英国の二の舞になりそうです。
そごう・西武、DHC、大塚家具 VS SHEIN
日本銀行の黒田総裁が異次元の金融緩和を始めてから10年になります。物価が下がるデフレから抜け出し、企業の業績が良くなって賃金も上昇する好循環経済を目指しましたがいまだに実現していません。黒田総裁は当時「物価が上がれば賃金も上がる」と説明していましたが、今は「物価は上がっているけど賃金は上がっていないので金融緩和を続けなければいけない」に修正しました。金融緩和を続ける日本と引き締める米国との金利差が広がり円安を更新しています。かっての日本では円安になると輸出が伸びて景気が良くなり中小企業や家計にもプラスの面がありました。しかし、現在は円安がプラスになるのは一部の大企業で、ほとんどの中小企業や家計にとってはマイナスになっています。中小企業の賃金水準が低いのは生産性が低いことに起因しています。家計が厳しいのは社会保険料や電気料金が上がり円安による物価高騰が家計を苦しくしています。黒田総裁はデフレによって日本経済が停滞しているのだから、物価を上げれば経済は上向くという基本的な考え方は変えていません。だから経済回復を支えるためとして金融緩和を維持しています。日銀の金融緩和によって急速に円安が進み、それに歯止めをかけるために政府は10月一ヵ月で9兆3500億円という過去最大規模の為替介入を実施しました。しかし、給料が上がらず、円安が進み物価高で苦しむ人達が増え続けますと方向変換が求められます。企業が成長し、給料が上がり、物価も緩やかに上がって成長していくのが経済のあるべき姿だからです。
百貨店のそごう・西武が米国ファンドに売却されます。百貨店の収益構造は大きく変わり、かってファッションビルともいわれた百貨店の衣料品の売上割合は食料品の売上高を下回るようになりました。かっては小売りの盟主とされた百貨店の衰退を象徴しており脱百貨店モデルは追随する百貨店が相次ぎ、百貨店のショッピングセンター化は、販売競争に拍車をかけ、これからは価格競争、生存競争に適応できない企業は自然淘汰されることになります。オリックスは化粧品や健康食品を手がける「DHC」を買収すると発表しました。買収金額は3千億円規模になると予想されます。大塚家具創業家の資産管理会社「ききょう企画」が債務整理を進めていましたが解散・清算が決定されました。大塚家具は創業家一族による経営権争いで業績が悪化し家電大手のヤマダデンキに吸収合併されました。今回の「ききょう企画」の清算により大塚家具の名前は、すべて消滅することになります。
中国のアパレル大手「SHEIN」が東京・原宿に常設ショールームを出店しました。コロナ禍のアメリカで大ブームとなり売上高は3兆円に迫る勢いです。常設ショールームでは実物を見たり試着はできますが購入はできません。買うのはアプリをダウンロードしてECサイトのみとなります。ウエブサイトを一度開くとAIで判断した顧客の好みの商品を次から次へと勧めてくるのが特徴です。企業を取り巻く環境が激しく揺れ動き、消費者ニーズの変化、消費者満足の変化、経営戦略の失敗、ウクライナ情勢による原料高、コロナ禍、円安などの対応を間違えれば、いつ倒産・廃業になってもおかしくない状況です。
米国大手IT企業アマゾン、旧フェイスブックなどでは1万人規模の人員削減が進められています。米国企業は、景気減速の波を感じると早い段階で解雇を始めて対応を急ぎます。アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏は「景気後退がすぐにやってくる可能性が高い」と警鐘を鳴らしました。米国経済に連動している日本経済も景気後退に備えた対応を早目早目に取っていかないと、そごう・西武、DHC,大塚家具のような結果になりかねません。そうならないための戦略と挑戦があらためて問われています。
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