更新情報
2023年3月 茶況_No.390
産地情報
令和5年3月15日
茶 況
茶園では、新茶期に向けて春肥投入作業や防霜ファンの点検などの作業をしている生産者の姿が見られます。ここ数回の適度な降雨で茶園は潤い良好な園相を保っています。2022年の静岡県の生葉収穫量は12万9200トン(4%減)に対して鹿児島県13万400トン(2%増)と静岡県は初めて生葉収穫量で首位の座を明け渡しました。生産者の高齢化と茶価低迷による摘採面積の縮小が響いた形です。後継者が無くて荒れている放棄茶園が、あちらこちらで目立つようになってきました。生産額が年々減少して放棄茶園の増加につながっています。茶価の回復が見込めない現状においては、生産性向上やコスト削減が大きな課題となっていますが収益回復の打開策は見つかりません。若い生産者は農業でも将来を見据えた経営が成り立つ形態に変えていきたいと国・県・市の支援事業を活用して芽キャベツや白ネギなどの栽培に転換して複合経営に取り組む生産者も出てきました。これから機械整備や工場清掃作業を進め新茶を迎える準備に入ります。肥料や燃料の価格は高騰しており日本茶を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。桜の開花が平年より1週間ほど早くなっていますので新茶も早く始まりそうです。
産地問屋は出荷作業を進めながら機械整備や冷蔵庫の整理作業を進めています。現時点での産地在庫は適正ですが上級茶は少量あれば間に合うという問屋が多く新茶相場に影響しそうです。緑茶輸出額は増加基調を推移しています。2022年の輸出額は前年比7%増の219億円と過去最高を更新しました。抹茶や粉末茶などの粉末状のものが68%を占めています。輸出は相手国に合わせた対策が必要ですので有機栽培の原料確保に力を注ぎます。静岡茶市場では今年の新茶から斡旋手数料を2.3%から3.3%へ27年振りの改定に踏み切りました。売上額・手数料収入が半減し限界に達したとのことですが1%の出費増は生産者にとって痛手です。
消費地では新茶期に向けた商品企画や販促計画を進めています。店頭では「予約新茶」の受付も始まりました。前年並確保が目標です。お気に入りの茶道具があれば、お茶を楽しむ機会も増えることから陶器やガラスなどタイプの違う急須やカップを提案してリーフ茶の販売につなげているお店もあります。戦前から戦後にかけて商店街は日用品を買い求める場所として中心的な役割を果たしてきました。しかし、1970年代以降、車社会になって郊外に大規模店舗ができたことにより消費行動が大きく変わり全国の商店街がかっての勢いを失いました。商店街をどうしていきたいのかという意識を共有して「週末市」などを開催して頑張っている商店街も有ります。中小企業向けの各種支援策が相次いで終了し先行きの不透明感から事業継続を断念する動きも出ています。事業譲渡先も見つからず廃業以外の選択肢はないといったケースも目立っています。
農林水産省では、小中学で日本茶の魅力を伝える「茶育(ちゃいく)」を広めようと農家や各種団体と教育現場のマッチング支援に乗り出しました。子供たちに日本茶に親しんでもらい中長期的な消費拡大を目指します。アメリカの大手銀行「シリコンバレーバンク」と「シグネチャーバンク」の経営破綻が相次いで発表され、金融システムの不安定化が懸念されています。世界経済も連鎖を防ぐニュースで慌ただしくなってきました。
不 易 流 行
日本の昨年の出生数が80万人を下回りました。政府の推計より11年も早い減少幅です。結婚に対する意欲の低下から未婚率が高まり、結婚しても少子率が上がり出生数が減少するという難しい問題を抱え危機的状況です。少子高齢化の進行により我が国の総人口は2008年をピークに減少に転じており、現在の日本の総人口は1億2463万人です。2030年には1億1662万人、2060年には8674万人にまで減少すると見込まれています。2025年には高齢化比率が3割を超え、2050年には4割に達するなど超高齢化社会を迎えます。また、生産活動の中心となる生産年齢人口(15歳~65歳)は2030年には総人口の約半分になると予測され日本の「稼ぐ力」は極端に弱まると見込まれます。将来は地方の居住地域の約6割以上で人口が半分以下に減少し、約2割は人が住まなくなる無居住化になる恐れがあります。人口規模が小さい自治体ほど人口減少率が高くなり過疎化が全国で一層深刻化すると予想されます。岸田内閣はは子育て支援予算を倍増して「異次元の少子化対策」を実施するとしていますが、政府からの金銭的援助によって結婚数が増えたとしても、それが出生率の増加にはつながるとは限りません。問題は結婚しても少子化現象が無くならない点ではないでしょうか。先進諸国においては生活が豊かになればなるほど出生数が増えない傾向が顕著となっています。したがって先進諸国では移民政策を採用して人口問題を解決していますが、日本では外国人差別の意識が根深くあり外国人差別の意識を排除することが先決問題となっています。
人口減少が経済全体の縮小につながり2040年にはマイナス成長に陥ると予想されれていますが、人口が減っても生産性が上がれば問題はないのですが残念ながら日本の生産性は他の先進諸国と比べて下位に位置します。生産年齢人口(15歳~65歳)は、これから減る一方ですので日本の国力はさらに落ちていきます。人口が減っていけば、今まで3個買っていたものが2個買えば間に合うようになります。今までは3店舗あった店舗も2店舗で間に合うようになります。今まで3台必要だった車も2台で間に合うようになります。そこで熾烈な店舗間競争が起こりますし、経済は縮小していきます。中国の電気自動車(EV)メーカーのBYDが日本の乗用車市場に参入しました。2025年までに100店超の販売店網を日本に整備する計画です。そこで、トヨタもEV戦略の立て直しに新世代の経営者に社長交代しました。豊田前社長は、EVだけが唯一の選択であることに反対を表明していましたが、ハイブリット車(HV)や水素自動車についても捨て切れない未練があるためにトヨタはEV戦略で世界16位と大きく出遅れました。カリフォルニア州は2035年以降ハイブリット車(HV)の新車販売禁止を決定しました。今のままでは大変革期の「EV戦争」には勝ち抜けないとトヨタは社長交代を決断したのです。
これから少子高齢化にともない人口減少を迎える日本。すべてのものが今までよりも少なくて済む大変革期を迎えます。俳人松尾芭蕉の根本理念に「不易流行(ふえきりゅうこう)」という言葉があります。「不易」とは時がたっても変わらない本質、「流行」とは時代とともに変化するもの。コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻で企業経営の前提となる社会や経済の先行きは、ますます見通しづらくなっている上に、少子高齢化・人口減少社会に入っていきます。激変する環境に対して「変えてはいけないもの、変えなければいけないもの」今から今後を見据えて対応していかなければならない時代になったと言えます。
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