更新情報
2023年7月 茶況_No.394
産地情報
令和5年8月2日
茶 況
茶園では、熱中症に注意しながら朝夕の涼しい時間帯に管理作業が進められています。連日の猛暑に加え雨がありませんので畑を潤す一雨を待ち望んでいます。この猛暑と畑の乾燥状態が続きますと、9月中旬から始まる秋冬番茶の摘採にも影響が出そうです。今年の静岡県内の一番茶生産量は13%減と過去最低の水準をさらに下回り、二番茶も14%減と2年連続で減少しました。農家の高齢化や厳しい販売環境により離農が進んでいることが減産要因となっています。リーフ茶需要の低迷から県内茶問屋が高価格帯の一番茶の仕入数量を抑える傾向にあり販売単価は上向きません。逆に肥料・農薬・資材・重油・電気料金などが高止まりして茶工場の収益を圧迫しています。飲料メーカー伊藤園の決算は、緑茶飲料「おーいお茶」は過去最高の9000万ケースの販売を達成し6%増ですがリーフ茶部門は3%減と発表しました。リーフ茶からドリンク茶にシフトしていることがうかがえます。
産地問屋は、夏休み前の仕上と発送作業を進めています。工場内は火入れ機を使用するために冷房ができませんのでの高温の中での厳しい作業となります。東京商工リサーチは、上半期の倒産件数が前年同期比32%増と5年ぶりの高水準になったと発表しました。今後もコロナ禍からの業績回復が遅れた企業を中心に倒産・廃業が増えるとみています。
昨今、農業の担い手不足や耕作放棄地が増加の一途をたどっていますが、掛川市は「掛川市有機農業実施計画」を策定して耕作放棄地の解消や、もうかる農業への転換など「持続可能な農業」への実現に向けて調査と対策をしています。しかし、今のままでは「持続不可能な茶業」の声も多く聞かれます。輸出は順調です。財務省が2023年1月~6月の緑茶輸出金額は13%増と発表しました。円安効果を追い風に輸出額が伸びて国産抹茶の生産量は需要に追い付かない状況が続いています。
中元商戦が一段落した消費地では、連日の猛暑で商店街の人通りも日中はまばらで、夕方から活気を取り戻します。家庭で2ℓのペットボトルが普及していますが「水出し緑TB」で出したお茶を冷蔵庫に保管して飲むように奨めたり、外出時にはマイボトルを奨めています。急須で出したおいしい一番茶を氷の入ったグラスに入れて急冷する「冷茶」も夏には最適ですと説明します。店頭で誠実に、お客様が何を求めているかを探りながら対応していく強い思いが感じられます。
日本百貨店協会から、年間売上高はピークの半分、店舗数は4割減と発表されました。山形県、徳島県、島根県など百貨店ゼロの県も出ています。町のシンボルとして機能していた頃を考えますと、隔世の感がありますが時代の流れでしょうか。
史上最も暑い7月が過ぎました。国連事務総長は、地球温暖化の時代は終わり地球沸騰化の時代が来たと警告しました。地球温暖化対策の国際枠組の「パリ協定」は温室効果ガス排出削減に取り組み、地球温暖化対策と経済成長の両立を目指しています。2024年パリ五輪は使い捨てプラスチックの使用を禁止しました。オリンピック競技場内にはマイボトルを持参しないと入場できません。企業や個人の行動変化を期待しているからです。世界的な脱プラスチックの流れは加速していきますが、現在飲料の主流となっているペットボトル飲料の流れも変化がありそうで先行きは予測できません。
事業承継時代
「2025年問題」とは、第一次ベビーブームで生まれた団塊世代800万人が75歳以上となり日本が超高齢化社会に突入することに起因するさまざまな問題です。医療費・介護費・年金など社会保障の面で大きな問題となることが予想されますが「事業承継」も2025年問題の影響を受けるとされています。2025年問題によって事業承継を行えずに廃業する中小企業の増加が予想されるからです。2000年に50~54歳にピークがあった経営者年齢の山は、2015年には65~69歳、2025年には75~79歳と高齢化による引退の年齢を迎えます。全国278万社のうち46%の127万社の中小企業が後継者不在などの事業承継問題に直面すると予測れます。事業承継がままならないなか、経営者たちが次代への引継ぎを断念して引退を選択せざるを得なくなっているのが実情です。日本企業のほとんどは創業一族による同族会社ですが、戦後70年余りが過ぎて日本経済は団塊世代が次々と引退期に入っていく「事業承継時代」を迎えるのです。もし仮に127万社が廃業するとなれば650万人の雇用が失われ約22兆円ものGDPが消失するという経済的損失を被ることになります。事業承継とは会社や事業を後継者となる人や企業に引き継ぎ次の世代へ存続させることです。それには次の ①親族内承継 ②親族外承継(会社の役員・従業員・関係者)③M&Aによる承継(第三者)の3種類に分類されます。買収側は買収する価値のない会社を承継することはありません。買収によって販売・設備・技術を活用して相乗効果を生まなければ買収するメリットがないからです。事業承継を行いたい企業に魅力や価値がなければ適切な承継先を見つけることができずに廃業に至るケースもあります。1868年創業の「木挽町べんまつ」は東銀座の歌舞伎座前に本店を構え、歌舞伎座の役者や観劇客に長年親しまれてきた老舗の弁当屋でしたが後継者不在から2020年に廃業を選択しました。後継者がいて承継ができても、互いのビジネス観の違いからお家騒動が表面化して消滅する例もあります。2022年に消滅した大塚家具です。父・勝久氏は高価格帯の家具を並べ会員顧客にスタッフが商品説明をして販売する独自の販売スタイルを確立していました。一方、娘・久美子氏は会員制営業は時代に合わないと、幅広く大勢の顧客を集めなければとの考えでした。父娘の対立は臨界点に達し、父・勝久氏と長男・勝之氏はともに会社を追い出されるという前代未聞の親子喧嘩となりました。大塚家具は会員制をやめて敷居の低い店舗に変えたものの、ニトリやイケアといった低価格の自社開発商品を取り揃えた大型店の台頭により大塚家具は赤字に転落して業績回復することはありませんでした。「家具や姫」で一世を風びした娘・久美子氏の率いる大塚家具は消滅して、父・勝久氏が率いる匠大塚が今も健在なのは皮肉な結果です。事業承継を行うためには、まず後継者を探さなければなりませんが経営者としての資質のある人を見つけることは容易ではありません。創業一族が経営権をめぐって繰り広げる骨肉の争いは一族四散の運命を辿ることになります。
大半の中小企業は後継者難にあえいでいますが、こうした状況下かえって繁盛するビジネスがあるのも皮肉です。後継者難に悩む中小企業と事業拡大を望む企業とをマッチングさせるM&A仲介業です。経営者は子や孫に承継することを諦め、市場原理に委ねて買い手が現れるのを待ちます。近年、M&A仲介業者の業績は拡大一途です。
事業承継とは、中小企業の熱い想いや技術を次の世代へつなぐことですが、廃業の増加による雇用や技術への影響が懸念されます。このままでは、日本経済を支える貴重な技術や人材が失われる可能性があります。「事業承継時代」の到来を考えれば、事業承継に真剣に向き合う必要がありそうです。
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