更新情報
2024年5月 茶況_No.402
産地情報
令和6年5月24日
茶 況
「この状況が来年も続くなら、もうやっていけない」
この悲痛な声は、一番茶の生産を終えた生産者の切実な叫びです。
昨年より8日遅く4/23(大安)の市場開きから始まった今年の新茶は途中5回の雨による中断を挟み5/16に終了しました。生活スタイルの多様化により、急須で入れるリーフ茶の需要低迷を反映して問屋の仕入姿勢は終始慎重で、序盤から終盤まで選別買いの傾向が続きました。いつもは底値になると買い支えるドリンク原料の仕入も終始低調で推移しました。市場関係者は「底が抜けた」と安値がここまで下がったのは前例がないと嘆きます。燃料費など製造コストの高騰もあって、底無しの軟調相場に「この状況が来年も続くなら、もうやっていけない」と悲痛な声が上がります。終盤には底値付近の荷を二茶の代替品として確保する動きもありましたので、一番茶で仕入した分、二茶の仕入量が減り二茶相場にも影響が出そうです。
二番茶を前に県内農協は受注生産の徹底を生産者に通知しました。販売先の決まっていない荒茶は生産しない旨を明記して、無計画な生産は過剰在庫につながり、相場下落につながると警鐘を鳴らしています。この通知により二番茶の製造を取りやめる工場も出ています。
一番茶の生産をもって幕を下ろした工場もあります。組合員の平均年齢が70歳を超え、深夜に製造することが難しくなったことと、相場低迷により採算が合わなくなったことが主因です。今年の相場低迷を受けて廃業を考える生産者も多数います。掛川市の生産者数は2010年1415戸から2020年536戸と10年で62%減少し離農がさらに加速しそうです。安定した所得のもとで後継者が希望をもって茶業に取り組めるように掛川市は「掛川茶フェアトレード」を今年の新茶期からスタートさせました。持続可能な茶業を図るのが目的で掛川市内24茶商社、32生産工場が参加しています。茶商社は、あらかじめ仕入したい品質や数量を明示し伝えます。生産者は、販売先を明確にした計画生産で相場に左右されない取引を目指すのが目的です。地元の茶商社が地元の生産者を支えなければ「掛川茶」が消滅してしまうとい強い危機感から始まりましたが、急須で入れる上級茶の需要が低迷している現状では、支え続けるのには限界があり「掛川茶フェアトレード」もうまく機能しませんでした。 一番茶は価格によってそれぞれの用途があります。荒茶3000円以上は専門店と通信販売業者が急須で入れるリーフ茶として販売します。荒茶3000円~1000円は主に食品スーパー、仏事用のリーフ茶として販売します。荒茶1000円以下はドリンク原料、会社納品用として使用されます。現在は仏事用と会社納品需要がなくなり専門店の廃業も増えていますのでリーフ茶需要は減少の一途です。都市部では急須で入れるお茶になじみのない層が大多数を占めます。茶業界はマーケットの変化に気付くのが遅すぎました。消費者ニーズは大きく変化しているのに対策をとってこなかったツケがここに来て表面化したのです。
経営戦略の違いによって大きく明暗が分かれた例があります。「シャープ」と「ソニー」です。シャープは「世界の亀山モデル」の液晶テレビで一世を風靡しましたが韓国や中国との価格競争に負け液晶パネルの生産から撤退します。ソニーグループは売上高が前年比19%増の13兆円で4年連続で過去最高を記録しました。マーケットの変化をとらえ会社を変化させながら販売施策を取ったことが成功の要因です。ゲーム事業・映画事業・半導体事業・金融事業も手掛けます。先を見る経営戦略の違いによって2社の明暗は大きく分かれました。
このままですと生産者・産地問屋・消費地専門店の7割は廃業せざるを得ません。茶業界は大事な転換点に入りました。過去の負のサイクルから脱却して正のサイクルをつくり、しっかりとした戦略のもと販売施策と業態変化が求められています。茶業界は正念場を迎えています。
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