更新情報
2025年2月 茶況_No.411
産地情報
令和7年2月21日
茶 況
茶園は今冬の寒波に耐えていますが、生産者も諸々の大寒波に耐えています。農家の高齢化や担い手不足は深刻で15年間で生産量は20%以上減り、価格は35%下がっていますので収益が確保できる経営体質に構造転換することが課題です。静岡県内の新聞・テレビ等の報道は2024年静岡県荒茶生産量が前年比5%減の25800トン(鹿児島県27000トン)で、統計が残る1959年以降で初めて生産量が首位から陥落したと大きく報道しています。長年守り続けてきた「お茶は静岡」からの転落に関係者からは落胆の声が聞かれます。鈴木康友県知事は、すぐにコメントを発表「大変残念、農家の皆さんと一緒になって1位奪還に向けて取り組む」「国内需要は減少傾向が続き需要が伸びている海外に向けた展開が必要」と述べ、新年度当初予算案に盛り込んだ静岡茶の新たなブランディングと海外輸出に向けた生産体制の強化などに取り組む考えを示しました。一番茶は10%増でしたが二番茶から秋冬番茶までが13%減と、二番茶生産前にJA静岡経済連が価格下落による採算割れの恐れがあるとして農家に受注生産の徹底を呼びかけたために生産者が生産を抑えたのが要因です。秋冬番茶期には共同で生産するレタスの作業を進めた方が得策と判断して秋冬番茶の生産を取り止めた工場もありました。飲料メーカーが安定して原料を確保するには、二番茶・秋冬番茶だけでなく一番茶から買い支えないと農家は経営が維持できないといった声も出始めています。
近年の茶価低迷を受け、静岡茶市場は2025年新茶取引から従来の相対取引を電子入札取引に変更を進めています。静岡のソロバンによる相対取引と手合せは「静岡の文化だ」と言う茶商も多く、伝統の商習慣が消えていく一抹の寂しさを感じるのは私だけでしょうか。相対取引から電子入札に変えても茶価低迷が解消されるとは思えません。茶価低迷の原因は、もっと根深いところにあるからです。農林水産省は新たな茶業政策の骨子案を公表しました。そして今後5年間で農業の構造転換を集中的に推し進めると強調しました。需要の変化に対応した生産の推進と輸出強化を柱に据えた、「煎茶」から「碾茶」への転換や有機茶の拡大、茶園の集積やスマート農業の導入、日本茶の魅力発信や食育による消費拡大策など課題解決に取り組み地域経済を守ることが重要としています。2024年の緑茶輸出額は前年比25%増の364億円と5年連続で過去最高額を更新しました。抹茶や粉末緑茶など粉末状のものが75%を占めています。緑茶輸出額はこの10年で3.6倍に急増し、食品利用の抹茶需要の拡大から抹茶原料となる「てん茶」や輸出に向く「有機茶」が求められ輸出に適した生産転換を模索する動きが目立ちますが、国内の「煎茶」を飲んでくれる消費者を忘れないように「美味しいお茶」造り続けてくださいとの声も忘れてはいけません。農水省の担当者は「煎茶の重要性は変わらずしっかりと取り組むが、抹茶は桁違いの需要があり対応していくことが大事」と話しています。生産者からは「多額の設備投資がかかり普通の農家はまず抹茶生産はできない」「有機栽培に転換していく必要性は理解できてもなかなか踏み出せない」問屋からは「海外需要の拡大を受け茶業界は輸出に適した有機茶や抹茶への生産転換を模索する動きが目立つが、海外向けの抹茶一辺倒の流れには危険性もありリーフ茶も含め国内の市場をおろそかにしてはいけない」といった声も出ています。生産者の離農、産地問屋の廃業、消費地小売店の閉店など取り巻く環境は厳しくなっています。国内も世界も大きく変わる転換点を迎え、先を読み間違えれば奈落の底に落ちる覚悟が必要です。
Gゼロの世界
アメリカ調査会社は今年の「十大リスク」を発表しました。その中で「世界の警察官」がいなくなり、ならず者国家が勢いづいて世界は一層不安定になると指摘しています。
そして、国際秩序を主導する国家が存在しないリーダーシップ不在の混迷の時代へ入ると警告しています。全盛期の米国は西側諸国を束ねる盟主として国益を時には犠牲にすることもいといませんでしたが、トランプ氏の米国が目指す黄金郷は、かっての超大国アメリカとは似て非なる存在だと言わざるをえません。トランプ氏の言う「偉大なるアメリカ」とは何を意味するのでしょうか。軍事的優勢と経済的成功を追い求めるだけでは真の超大国とはいえないのではないでしょうか。今の米国には西側の同盟諸国や民主主義国家を惹きつける力は宿らないからです。関税を武器に相手を瀬戸際まで追い込んで譲歩を引き出すトランプ流外交で相手に迫ります。トランプ氏は交渉相手に勝つことしか考えていないように見えます。デンマーク領のグリーンランドの購入方針などは、まるで不動産開発業者のようです。ウクライナへの防衛支援継続の見返りに希少な鉱物資源のレアアースを要求したり、パレスチナ自治区ガザを長期的に米国が所有して開発すると、ガザ住民やパレスチナの人々の意向を無視した唐突な発言に世界から反発する声が相次いでいます。矛先は国内にも向かい、要職を自身に忠実な友人や身内で固め、自身の訴追に関わった司法職員を全員解雇して自身に忠誠心を示さない人を粛清する人事がまかり通っています。そして、議会襲撃で刑が確定した自身の支持者1600人を恩赦するなど司法にも政治介入して三権分立を脅かしています。報復に固執し傲慢で強権的な権力手法のトランプ氏には融和や国際協調という概念は存在しないようです。今の米国は法治国家ではなく、トランプ氏一人が米国政治の全てを左右する恐れがあり、それを止められる人は周りには誰もいません。専制政治体制のロシア・中国・ベラルーシなどの強権的な政治手法と何ら変わらなくなってきました。韓国では政治的な混乱が続いています。日本では与党が過半数を割り政策実現に難航していますが、ドイツ・フランス・カナダでも与党が過半数を割り極右政党が台頭して政権が崩壊しそうです。「自国第一主義」が世界的に広がり良識ある国々は強い危機感を持っています。そして、全ての国が「自国第一主義」のために防戦に徹するようになり、米国発のリスクが世界を覆い始めています。米国は世界における信頼を失いリーダー不在の世界観の出現です。G7(米国・英国・フランス・ドイツ・日本・イタリア・カナダ)の先進7カ国は時代遅れとなり、G20(G7+アルゼンチン・オーストラリア・ブラジル・中国・インド・インドネシア・韓国・メキシコ・ロシア・サウジアラビア・南アフリカ・トルコ・EU)では競合するビジョンが多すぎて、上手く調整された方針を示すことができません。G7は重要性を失いG20は機能していないGゼロの世界への序章です。トランプ氏は就任演説で「米国の黄金時代はいま始まる」とアメリカファーストの政権を船出させました。そして関税の障壁を高く築き、石油資源を堀りまくり、ひたすら自国の繁栄を追い求め「パリ協定」「WHO(世界保健機関)」からの脱退を表明しました。世界の警察官になることも、民主主義の価値の推進にも興味がなく、国際社会のために自国のお金を持ち出すのは、もう嫌だということです。
国際秩序を守るために国連のあり方も問われていますが、各国のネガティブな対応により力強さに欠けます。2025年は歴史に残る、混迷の世界、最も危険な年になるリスクを抱えています。国際秩序を守り真に世界を推進する能力と意思を持つ主導国が存在しないGゼロの世界に入ります。日本をはじめとする民主主義陣営の友好国や同盟国の安全保障や経済にも影響を及ぼす事態です。日本政府は米国や同盟国や国際機関とのさらなる関係の構築と対応を求められています。石破首相の手腕や如何に・・・・・。
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