更新情報
2023年1月 茶況_No.388
産地情報
令和5年1月30日
茶 況
茶園は10年に一度という最強寒波に耐えながら春を待っています。茶園の畝間に施された敷草は土の凍結や乾燥を防ぎますので大変効果を上げています。茶の木は休眠していますが、休眠が深く長いほど茶の木にとっては活力を養う好条件になります。良いお茶は良い茶園からが茶園管理の鉄則ですので日頃の茶園管理に気配りは欠かせません。静岡県の茶園面積は前年より700ha少ない13.800haと発表されました。1988年の23.300haをピークに現在は40%減となり茶園減少に歯止めがかかりません。後継者不足や高齢化に伴う労働力不足とともに、一番茶価格の下落が廃園の主な要因です。家計調査によりますと昨年11月の一世帯あたりの緑茶購入金額はリーフ茶が64g269円、ペットボトル茶が589円と発表され、金額ベースではリーフ茶よりペットボトル飲料に2倍以上支出されています。伊藤園の中間(半期)決算は売上2272億円(9%増)、経常利益125億円(11%増)と発表しました。「おーいお茶」の販売が堅調で5%伸長しましたが生活費全体が上昇する中、その影響を注視しています。
産地問屋は販路の維持と拡大に向けて営業活動を続けています。コロナ禍以降の経済環境は一変し、物価上昇による節約志向は、ますます強まっていますので企画・提案・販売方法も今までにない発想を求められています。問屋間の在庫補充の荷動きはほとんど見られません。先日、静岡茶市場で開催された販売会には185点の出品がありましたが、二番茶や棒・粉などのティーバック原料やドリンク原料の取引が中心でした。一番茶の大きな動きがないまま新茶期を迎えますと新茶相場に影響が出るのでは、といった声も聞かれました。今春から夏にかけてはコロナ禍で借入した無利子無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が始まります。融資を受けた会社は8割に上り、経営の下支えとなりましたが、経営環境は厳しい状況が続き返済負担が重くのしかかっています。金融機関は経営課題に直面している取引先に経営サポートを行いながら借り換え融資で対応します。先行き不透明感による不安定要素はこの先も残りそうです。
消費地では地元顧客に選択されるお店を目指して頑張っています。消費者にこのお店で買いたいと言われるように、そして選択されるための努力は続きます。物価の上昇幅が賃金の伸びを上回り生活は厳しさを増していますので財布のヒモはさらに固くなり好転の兆しは見られません。12月の東京の物価指数は4%上昇し伸び率は40年振りの大きさです。2023年に入り電気代・ガス代・食料品などの幅広い製品やサービスに値上げが広がり生活防衛意識はますます強まっています。
企業はコロナ禍・物価高・円安の三重苦に苦しめられていますがワクチン接種が行き渡り経済が急速に動き始めました。物価上昇も落ち着き、日銀の利上げの動向もあり、海外とは違う日本特有の姿が見えてきました。経済を取り巻く環境には依然厳しいものがありますが、新しい領域に踏み出していく環境は徐々に整いつつあります。
2023年「世界の10大リスク」は1位世界で最も危険な国ロシアが欧米の安全保障を脅かす。2位権力を集中させた中国が大きな過ちを犯す可能性が高い。5位追い詰められたイランと欧米との新たな対立。6位エネルギー危機。2023年を迎え厳しい環境が続き意識変革が不可欠と言われる中、日本は世界は何処へ向かい何処へたどり着くのでしょうか。
そごう・西武、DHC、大塚家具 VS SHEIN
日本銀行の黒田総裁が異次元の金融緩和を始めてから10年になります。物価が下がるデフレから抜け出し、企業の業績が良くなって賃金も上昇する好循環経済を目指しましたがいまだに実現していません。黒田総裁は当時「物価が上がれば賃金も上がる」と説明していましたが、今は「物価は上がっているけど賃金は上がっていないので金融緩和を続けなければいけない」に修正しました。金融緩和を続ける日本と引き締める米国との金利差が広がり円安を更新しています。かっての日本では円安になると輸出が伸びて景気が良くなり中小企業や家計にもプラスの面がありました。しかし、現在は円安がプラスになるのは一部の大企業で、ほとんどの中小企業や家計にとってはマイナスになっています。中小企業の賃金水準が低いのは生産性が低いことに起因しています。家計が厳しいのは社会保険料や電気料金が上がり円安による物価高騰が家計を苦しくしています。黒田総裁はデフレによって日本経済が停滞しているのだから、物価を上げれば経済は上向くという基本的な考え方は変えていません。だから経済回復を支えるためとして金融緩和を維持しています。日銀の金融緩和によって急速に円安が進み、それに歯止めをかけるために政府は10月一ヵ月で9兆3500億円という過去最大規模の為替介入を実施しました。しかし、給料が上がらず、円安が進み物価高で苦しむ人達が増え続けますと方向変換が求められます。企業が成長し、給料が上がり、物価も緩やかに上がって成長していくのが経済のあるべき姿だからです。
百貨店のそごう・西武が米国ファンドに売却されます。百貨店の収益構造は大きく変わり、かってファッションビルともいわれた百貨店の衣料品の売上割合は食料品の売上高を下回るようになりました。かっては小売りの盟主とされた百貨店の衰退を象徴しており脱百貨店モデルは追随する百貨店が相次ぎ、百貨店のショッピングセンター化は、販売競争に拍車をかけ、これからは価格競争、生存競争に適応できない企業は自然淘汰されることになります。オリックスは化粧品や健康食品を手がける「DHC」を買収すると発表しました。買収金額は3千億円規模になると予想されます。大塚家具創業家の資産管理会社「ききょう企画」が債務整理を進めていましたが解散・清算が決定されました。大塚家具は創業家一族による経営権争いで業績が悪化し家電大手のヤマダデンキに吸収合併されました。今回の「ききょう企画」の清算により大塚家具の名前は、すべて消滅することになります。
中国のアパレル大手「SHEIN」が東京・原宿に常設ショールームを出店しました。コロナ禍のアメリカで大ブームとなり売上高は3兆円に迫る勢いです。常設ショールームでは実物を見たり試着はできますが購入はできません。買うのはアプリをダウンロードしてECサイトのみとなります。ウエブサイトを一度開くとAIで判断した顧客の好みの商品を次から次へと勧めてくるのが特徴です。企業を取り巻く環境が激しく揺れ動き、消費者ニーズの変化、消費者満足の変化、経営戦略の失敗、ウクライナ情勢による原料高、コロナ禍、円安などの対応を間違えれば、いつ倒産・廃業になってもおかしくない状況です。
米国大手IT企業アマゾン、旧フェイスブックなどでは1万人規模の人員削減が進められています。米国企業は、景気減速の波を感じると早い段階で解雇を始めて対応を急ぎます。アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏は「景気後退がすぐにやってくる可能性が高い」と警鐘を鳴らしました。米国経済に連動している日本経済も景気後退に備えた対応を早目早目に取っていかないと、そごう・西武、DHC,大塚家具のような結果になりかねません。そうならないための戦略と挑戦があらためて問われています。
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