更新情報
2023年9月 茶況_No.396
産地情報
令和5年9月30日
茶 況
茶園では秋冬番茶の摘採が進められています。秋冬番茶は今年の茶価の一番下値になりますので主にドリンク原料として使われますが、食品スーパーの玄米茶やほうじ茶としての需要もあります。秋冬番茶の摘採時期と摘採位置は、来年の一番茶に大きく影響しますので、生育や気象状況を十分に考慮して適期に適切な判断が求められます。価格は前年並ですが、重油・電気や肥料高騰による生産コストの増大で生産を見合わせる工場や受注生産に切り換えた工場もあります。農家の減少や荒廃農地が拡大して農地利用の将来の姿が懸念されています。農地の集約化などに向けた取り組みを明確化することが喫緊の課題です。地域の農業を守り、地域における農業の将来のあり方を地域ごとに話し合い農地対策や生産農産物の地域計画を策定しています。
産地問屋は秋冬番茶の仕入と秋冬商戦に向けた販売促進に努めていますが、残暑の影響もあって低調に推移しています。新販路としての海外輸出は好調を維持しています。県内の茶商や茶農家は海外に販路を見いだして有機栽培の生産や抹茶の生産設備拡充などの生産体制を整え、生産・販売の両面で輸出戦略を実践しています。東京リサーチが発表した8月の全国倒産件数は前年比54%増でした。コロナ対策資金のゼロゼロ融資の返済が本格化した影響です。2年後の2025年には後継者難から「大廃業時代」を迎えます。全国で127万社の中小企業が廃業し、650万人が失業すると言われています。しかし、現在は人手不足が深刻です。商業調査では中小企業の68%が人手不足と答えています。介護士、建設業、サービス業、バス・タクシー運転手等です。これから人手不足が考えられる業種は看護士、サービス業、学校教員、農業、運転手などで今から人材確保に向けた取り組みが始まっています。
消費地では残暑の影響もあり毎日の売上に伸びが見られませんが、「秋の売出し」や「歳末商戦」も視野に販売計画を練っています。食生活の変化、家族構成の変化、ペットボトルの普及など様々な要因が絡み合い「売れない、売れない」が挨拶言葉のようになってしまいました。急須で入れるのが面倒というお客さまには「ティーバッグ」や「粉末緑茶」などをお勧めして消費者目線を大切に顧客の要望にきめ細かく対応して地域密着の「なくては困るお店」を目指して頑張っているお店もあります。
岸田内閣が新たな経済対策の柱を表明しました。デフレ心理が染みついた日本経済を、物価が上がって売上げが増え、賃上げにつながって消費が増え、企業の業績が良くなる「好循環社会」にアクセルを踏みました。しかし、さらに物価を押し上げ、人手不足を深刻化させかねない副作用も抱えています。現在は「今の景気が悪くなっている」とみている人80%に上ります。岸田政権発足後は「家計が苦しくなった」が58%と前回調査の42%から大幅に増加しています。幅広い分野で値上げが生活に深刻な打撃になっていることが原因です。経済対策とともに重要なのが外交政策です。ウクライナ問題、米中対立などの影響が世界規模で広がりを見せています。第二次岸田内閣で外務大臣を務める上川陽子氏は静岡県選出の静岡県茶業所会頭で日本茶業中央会の会長です。その手腕が期待されます。
世界から信頼される日本
ロシアがウクライナへ侵攻して1年7ヶ月が過ぎました。激しい攻防が続き戦争が長期化するとの見方が強まっています。世界は分断され、小麦や原油など食料やエネルギーの価格が高騰しています。アフリカではクーデターが多発して内戦状態です。フランスが撤退した隙をロシアが入り込もうと狙っています。そして、グローバルサウスと呼ばれる新興国や途上国から支持を得ようと動いています。中国も中央アジア、欧州を陸路と海路で結び経済的繁栄を築く「一帯一路」と呼ばれる経済圏構想を実現して米国の影響が手薄な地域を勢力圏にしようと目論んでいます。世界は二極化し、第二次世界大戦後の77年前の冷戦時代に戻りつつあります。西側諸国対東側諸国、民主主義対専制主義、米国・欧州対ロシア・中国の対立です。そして、世界は歴史が歩んで来た道を再び逆戻りするかのように動いています。世界は今後「無秩序」ともいうべき複雑な局面に入っていきます。そして日本は今、大きな転換点を迎えています。明治維新の時代は富国強兵、殖産興業によって国力を強化し、第二次世界大戦敗戦後は歯を食いしばって復興と成功を成し遂げました。
戦後、戦勝国(アメリカ・ロシア・中国)による日本の分割も検討されましたがダグラス・マッカーサーは分割しない方向で交渉をまとめました。天皇をどうすべきか、処刑・裁判などの多数意見を説得して天皇を訴追しない方向で戦勝国をまとめました。婦人参政権や巨大財閥の改体に大ナタを振るい、日本の民主化や憲法制定を進め、日本は驚異的な復興をとげました。マッカーサーは1951年の退任演説で「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」の名言を残しましたが、もうひとつ述べた言葉が「日本ほど穏やかで秩序のある勤勉な国を知りません。また日本ほど将来人類の進歩に貢献することが期待できる国もないでしょう。」と日本人の気質を称えました。現在の日本は経済力が衰え時代の転換点を迎えていますが、世界の構造が大きく変化している今こそ日本の存在価値が世界から認められ期待されています。日本の強みは長年培ってきた信頼なのです。世界の中での日本のGDPシェアの推移をみると敗戦後の1950年は3%でしたが、ここから快進撃が始まり昭和最後の1988年に日本は16%に対し、中国・インド・アセアンはすべて合わせて6%でした。日本はアジア最大の経済大国として21世紀を迎えましたが、2021年に日本のGDPシェアは5%、2022年には4%まで低下しました。一方日本を除くアジアのシェアは2021年には25%まで拡大し日本の5倍に成長しています。アジア各国が急速に力をつけています。
借金漬け外交により「債務の罠」に陥ったスリランカは、経済危機による物価高と景気低迷に人々は厳しい生活を強いられています。日本がすべての債務国に呼び掛けて債務問題の解決にむけた新たな枠組みを発足させたことが高く評価されスリランカ大統領は「日本が主導権をとればどの国も安心できる」と述べました。今や日本人の暮らしにとって、さまざまな面でASEAN は身近な存在です。そのASEANは安全保障・経済協力でも日本に期待しています。イギリスとEUは経済連携協定により日本を信頼できるパートナーとしてとらえています。日米韓安全保証協定により韓国との結び付きも以前に増して強くなっています。国際社会の分断が進む今こそ、日本の外交手腕が問われています。
日本はあらゆる分野で世界から遅れをとりましたが、世界から信頼され「信頼」だけは世界一といっても過言ではありません。唯一のよりどころとしてきた経済力にも陰りが見え始め、日本は新たな支柱を必要としています。世界からの信頼をもとに、世界で新たな一歩を踏み出す段階に来ているのではないでしょうか。
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