更新情報
2023年11月 茶況_No.397
産地情報
令和5年11月7日
茶 況
秋冬番茶の生産が終了した茶園では、来年の一番茶に向けた茶園管理が進められています。茶草場農法を実践している生産者は、刈り取った山草の乾燥作業を進め、細く切断してから茶園の畝間に敷きます。山草を敷くことにより雑草が生えず、保湿・保温・有機肥料になり、美味しいお茶づくりには欠かせない作業です。山草を刈る茶草場は、山の急斜面が多く、刈るのもプロの技が必要で重労働です。秋冬番茶は、ドリンク関連業者が大量調達してペットボトルやティーバッグの原料になりますが、終盤に値が崩れ単価は低調に推移しました。重油や電気料金などの生産コストが高騰する中、収益確保の見通しが立たずに途中で製造を取りやめた工場もありましたので生産量は2割減位と予想されます。斡旋業者は「買い手の仕入予定数量を越えた後も各地から荷が届き、これほど売るのが難しい秋冬番茶取引はかってなかった」との声も聞かれました。
産地問屋は仕入・発送作業を進めながら歳末商戦に備えた情報交換を進めています。そして、新しい提案、新しい企画を立ち上げて販路開拓に懸命です。10月の出荷は前年並を確保できましたが、過不足を調整するための問屋間の荷動きは見られません。品評会出品茶の入札販売会が各地区で開催されていますが、異例な残暑とリーフ茶需要の低迷による影響で落札率・落札価格ともに低調です。経営姿勢と販売ターゲットにより問屋間の格差も広がっています。
消費地では「秋の売り出し」も終わり「年末商戦」の準備をしています。苦戦は続きますが細やかな配慮で地元に愛されるお店を目指します。そして経営の「原理原則」を大切にしています。ある取引先の社長さまは「1店舗ずつ、1単品ごと、本当にいい商品でいいサービスで満足していただく。お客さんが決めることなんで我々はそれに向かって努力するだけ」とおっしゃていました。応接室の壁には「お客様のご満足第一」のイトーヨーカ堂創業者・伊藤雅俊氏の色紙が掲げられていました。お客様に誠実に応える社長に、長年に渡って繁盛している理由を垣間見た心地でした。
静岡県の基幹産業の輸送用機械出荷額の低迷が続いています。県内拠点を閉鎖して海外生産が増えたこと、土地や労働力を確保しやすい九州や東北への移転が相次いだことが原因です。それに対応して金融機関も「お客さまが抱える課題に対応するスピードが大切」見通し調査」業種欄に自動車部品・建設・観光・製紙等はありますが、以前はあった 「製茶」はなくなりました。製茶は主要産業ではなくなったということでしょうか。出荷額と稼ぐ力が長期的に低下している製茶業界は、変化する消費行動や生活習慣への対応が追いつかなくて、衰退の一途です。生産者も産地問屋も消費地小売店も高齢化し後継者難と売上減少から廃業を選択するところが多数出ています。低迷を脱出すべく、地産地消に取り組む市場を運営したり、ドリンク市場への参入、海外市場への参入やネット販売の強化、個性的な日本茶カフェの運営などを力強く進めて元気なところもあります。「強いものが生き残るとは限らない、賢いものが生き残るとは限らない、変化するものだけが生き残る」(ダーウィン進化論)変われる企業だけが生き残るという厳しい現実を目の当たりにしています。
「労働供給制約社会」がやってくる増え続ける高齢者人口、減り続ける現役人口
2025年に団塊の世代800万人がリタイア期にはいることで年間100万人の割合で働き手が減り続け、2040年に不足する労働力は800万人になるといわれ、127万社の中小企業が後継者不在で廃業するといわれています。すでに物流・建設・介護などのエッセンシャルワーカーなどでは労働市場は空前の売り手市場となっています。転職のため離職する社員も多く、慢性的な人手不足から労働環境が悪化して、さらに人材が流出する悪循環に陥っている企業もあります。コロナ禍で経済活動が一気に収縮すると人手不足の問題は隠れてしまいましたが、コロナ禍が落ち着いて経済活動が再び活発化すると人手不足問題が顕在化してきました。外食チェーンでは注文はアイパッド受注になり、配膳ロボットの導入が広がっています。人手不足により旅館・ホテルでは全室稼働できなかったり、外食産業では全席稼働できなかったりで廃業を選択するところも出ています。それを受けて、人の代わりとなるテクノロジーやAIの分野は目まぐるしく成長しています。AIが普及するようになると人手不足は、ある程度解消されるようになりますが、AIやロボット技術の進化により自動化が進みホワイトカラーの仕事が無くなるといわれています。ホワイトカラーは人手過多、ブルーカラーは人手不足の時代到来です。2040年には完全に需給バランスが崩れて現役世代人口比率は54%まで低下して800万人の人手不足が生じると予測されます。需要に対して供給が追いつかなくなり供給に制約が掛かるようになります。
「労働供給制約社会」とは、労働力の供給が不足している社会を指し、必要な労働力の需要と供給のバランスが崩れ、慢性的な労働供給不足社会に直面し、企業の生産や経済成長が制約される可能性があります。私たちが生活で必要とする製品やサービスなどの需要は労働力、つまり働き手が供給することで満たしています。しかし、高齢化が進む影響で介護や医療などの需要は増える一方で、労働力は減少し事業の継続が難しくなるところも出て来るといわれています。特に懸念される分野が「介護・医療」の不足率25%、「建築・土木」は不足率22%、2024年問題によるドライバー不足により、運送業界も厳しい局面を迎えます。農業は働き手の高齢化による人手不足で農産物が減少して日常生活に影響が出る可能性があります。暮しへの影響力が深刻化して日々の生活が大変になり仕事どころではなくなる場面です。現在でも「人手不足」や「人件費高騰」に起因する倒産や廃業が急増しています。 かつては景気が良くなると人手不足になり、景気が悪くなると人余りになる「人手不足」と「人手過剰」を繰り返し経済成長してきました。景気の動向と失業率は逆相関関係にあり、先読みをしながら苦難を乗り越えてきました。人手不足の原因は昔は景気でしたが、今は人口減少と少子高齢化が原因です。これからは高齢人口比率が高まり慢性的な労働供給不足に直面します。これまでの人手不足とは異なる新たな局面に突入したということです。景気が良くなろうが悪くなろうが日本は人手不足の時代に入ったということです。首都圏900社のアンケート調査によりますと、事業を縮小する49%、M&Aの検討10%、倒産・廃業の恐れ3%、その他38%の結果となり、変わらなければ事業を維持できない現実が浮き彫りとなりました。高度経済成長期モデルからの転換と、そのための再編・統合は必要不可欠です。これから迎える人手不足に対応できる企業だけが「労働供給制約社会」時代を乗り越え、生き残るキーポイントになりそうです。
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