更新情報
2023年12月 茶況_No.398
産地情報
令和5年12月2日
茶 況
茶園では冷え込みが強まる冬期に向けて防風・防寒対策や敷草などの越冬に向けた茶園管理を進めています。年末までは敷草にする山草を刈る作業も続きます。これからは来年の一番茶に向けた作業になりますが、無事に来年の一番茶を迎えられるのか今から心配の種は尽きません。重油・肥料が値上がりして茶価は据置ですと「生葉代から重油代と肥料代を引くと残るものはほとんどない」といった状況が続いているからです。今期で廃業する農家や閉鎖する茶工場も増えているのが現状です。行政・農協・茶商で対策に取り組んでいますが、リーフ茶の消費が回復しないことには妙案はありません。相互扶助を理念として農家を支える農協(JA)も、生き残りをかけて合併が進んでいます。組合員の半数が70歳以上の高齢化で、金融事業の先細りから事業利益は減り続けています。農産物販売事業は全農協の3/4が赤字、金融事業は頼みとする農林中金が外国債券の含み損1兆円超えで好転の兆しは見えません。
現在の日本の農家の平均年齢は68.4歳で、日本農業の衰退が止まらない現実に直面しています。現在の農業者が後期高齢者となる2030年には廃業を選択する農家が増えて農家数が現在の1/3になると予想されます。現在の日本の食料自給率は38%ですので、その1/3になったら国民の死活問題です。但し、AIやロボットの技術が進み生産性は上がりますので、この数字の限りではありませんが…。
静岡県の茶栽培面積が発表されました。前年比500ha減の1万3千haと、10年前に比べると5千ha減少しており牧之原大地の大茶園が無くなったことになります。それでも不足感はなく茶価が上がらないことに危機感を感じます。自治体が地域ぐるみで有機農業に取り組む事例も増えています。有機食品の市場はこの10年で倍増し国内は2240億円の市場規模があります。各市町村は来年度までに将来の農地利用の詳細な姿を「地域計画」として策定するように課せられていますので各地域ぐるみで農業の将来像を語り合っています。
産地問屋は歳末商戦に向けた仕上と発送作業に追われています。しかし、産地問屋間の過不足を調整する荷動きは見られず、各地区で開催されている入札会も上級茶の仕入姿勢が慎重で低調です。新しい消費市場が開拓できない問屋は売上減少は避けられず、体力のあるうちに廃業を選択するところも出ています。
消費地では歳末商戦の本番を迎え忙しくなってきました。消費市場が縮小する中で、地元に愛され続けるように、高級感を大切にしながらも敷居を高くしない細やかなお店づくりに努めています。「あのお店の、あの商品」をお勧めコーナーに陳列して地域浸透を図ります。「こだわり、やすらぎ、もてなし」などをテーマに品揃えを拡充して得意客の期待に応えます。お客さまのニーズを探り、お客さまを見続けた経験からベストの品揃えと接客を心掛けます。「お客さまが決めることなので、選ばれる理由を打ち出すために、それに応え努力するだけです」とのことです。 世界はウクライナ、パレスチナ、中東情勢、アフリカ紛争、難民問題などの難問に直面しています。日本は中国の不買運動、円安を抱え難しい舵取りを迫られています。変わっていく世界と日本の将来を見据えた対策を今から練っておく必要がありそうです。
真 善 美
与謝野晶子の「みだれ髪」の中に「かくてなほあくがれますか真善美わが手の花はくれないよ君」という有名な歌があります。歌の中で「真善美」をあこがれ、理想ととらえていますが、晶子はあこがれの理想よりもっと現実の恋を楽しみましょうと歌っています。「真善美」とは人間が生きる上での理想の状態を3つの言葉で具現化した表現です。「真」とは真実・誠意、「善」とは道徳的に正しいこと、「美」とは美しく調和していることを意味します。
ユニクロの指導者「ファーストリテイング」社長の柳井正氏は「真善美」を普遍的な原理原則、人間の良識的なものととらえて、それを大切にした経営を積み重ねて現在の地位を築きました。売上高3兆円、店舗数3600店、従業員数6万人の巨大小売業に成長させました。「1枚1枚、毎日毎日、こつこつと作り続けてきた。そこには何の秘訣も、楽に行ける近道もない。店舗が1店舗でも1万店舗でもやることは同じ。小売店の生き残る道はこうした真摯な精神しかない」と商売の原理原則を説いています。1店舗ずつ、1単品ごと、本当に良い商品で良いサービスで満足してもらう。お客さまが全部決めることなので、お店はそれに応えるために努力するだけとの信念です。良いと思う商品をつくって提供すればいいという時代は終わったとも述べています。ユニクロを創業した1984年から、お客さまの求める服をどうやって店に揃えるかということばかりをずっと考え続けて40年が過ぎ、現在があるそうです。柳井氏は毎日の生活と商売の中で「真善美」を実践できるように最善を尽くしています。何が真実なのか、何が善いことなのか、何が美しいことなのか、その感性がすごく大切だと感じているからです。それは言葉だけでなく行動で現れます。行動として実行しないと始まらないからです。
世界の現状を見ると、戦争、貧富の差の拡大、未知なる病気、気候変動など解決すべき難題が山積しています。その事に大きな危機感を持っています。経営とは持続可能であることを前提にしているからです。持続可能にするためには、グローバルな視点で良識を持って経営していくことが大切だと創業時からずっと考え続けています。世界のため、日本のために何ができるのか、そのために良い個人であり、良い企業でありたいと常に思考しています。良い人のところには良い人が集まってくるし、良い企業には良い企業が集まってきます。ビジネスを通して、より平和な世界、みんなが幸せになれる世界を実現するためにチャレンジを続けています。「地方の炭鉱町の商店街からはじまり、今日までひたすら真面目に、本当に良い商品をお客さまにご提供し続けることだけを考え、お客さまのご満足第一で今日まで来ました。服を変え、常識を変え、世界を変えていくための挑戦をこれからも続けていきます。」
「真善美」は、人間が生きる上で理想の状態を表現する概念ですが、ビジネスにおいて正しい手法を決断し実行するには、経営者が真善美の力を備えることが大切だといわれています。人間が生きる上で嘘・偽りがなく、道徳的・論理的に正しく、美と調和する、最高の状態を表す言葉として用いられますが、ユニクロ創業者・柳井正氏は、この言葉を人生の目標と理想として生き方のモットーとしています。「ウクライナ、パレスチナ、中東情勢、米中対立など、ユニクロが世界展開すればするほど不確実なリスクも高まります。コントロールできない混沌とした世界だからこそ原理原則に立ち返り、個々の店・商品・従業員の役割や使命をさらに徹底し「真善美」を実践することが重要だと考えています。」 柳井氏は「次の目標は売上高5兆円」と壮大な目標を掲げていますが、その主張の軸にブレはなく、今後も成長を続けていくことでしょう。
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